おれん家の本棚

音楽・映画・書籍なんかのテキトーな感想。フツーにネタバレする。

倉橋由美子「スミヤキストQの冒険」


あらすじ
そこは悪夢の島か、はたまたユートピアか。スミヤキ党員Qが工作のために潜り込んだ孤島の感化院の実態は、じつに常軌を逸したものだった。グロテスクな院長やドクトルに抗して、Qのドン・キホーテ的奮闘が始まる。乾いた風刺と奔放な比喩を駆使して、非日常の世界から日常の非条理を照射する。怖ろしくも愉しい長編小説。

共産主義を揶揄したとして物議をかもした作品。デビュー作「パルタイ」の延長にある印象を受けました。
ただこの作者って右翼でも左翼でもなくて、イデオロギー信奉そのものに対して批判を加えているんだよね。「結局お前たちはそれらしいお題目がありさえすればいいのだ」という冷笑が感じられる。
スミヤキズムの要領の得なさとは逆に、排泄行為や性行為が生々しく描写されているのはリアリズムの極北という他ない。
あるものだけがあるという視点、全てを突き放して見下す観察眼。
クールだぜ。