おれん家の本棚

音楽・映画・書籍なんかのテキトーな感想。フツーにネタバレする。

安部公房「砂の女」

完成された物語


あらすじ
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに、人間存在の象徴的な姿を追求した書き下ろし長編。20数ヶ国語に翻訳された名作。 
 
この小説って色んなところに2重構造が出てくるんだよね。
目立ったところを挙げると「穴の内と外」「村落の内と外」「社会の内と外」の描写に多くの項が割かれている。
そして内と外の区分が酷く曖昧ときている。
例えば、一見すると男は村に運命を握られてるんだけど、男が穴掘りをやめると村が消滅してしまうという逆巻きの関係性が存在したりとか。
最後の最後で男が希望を手にするに至り世界の内と外が逆転する結末は見事というほかない。
未だ自分の中で消化しきれていないのだけど、認識論を小説にするとこうなるんじゃないかと思った。