おれん家の本棚

音楽・映画・書籍なんかのテキトーな感想。フツーにネタバレする。

北杜夫「どくとるマンボウ青春記」

2011年10月24日、惜しまれながら世を去った北先生の青春回顧録。


あらすじ
18歳のマンボウ氏は、バンカラとカンゲキの旧制高校生活で何を考えたか―。個性的な教師たちと大胆不敵な生徒たちが生み出す、独特の元気と喧騒に身をまかせながら、ひそかに文学への夢を紡いでいったかけがえのない日々は、時を経てなお輝き続ける。爆笑を呼ぶユーモア、心にしみいる抒情、当時の日記や詩を公開、若き日のマンボウ氏がいっぱいにつまった、永遠の青春の記録。

1学生の青春を切り取った手記としてこれ以上を望むべくもないでしょう。
笑いあり涙あり哲学ありの豊潤な内容になっています。
戦後混乱の中で、逆に精神的自由を得た旧制高校の学生たちがエネルギーを発散する様子にはある種の理想が感じられます。
それは今の官僚化した教育機関が失ってしまった理想ではないでしょうか。
反発していた父への愛情をハッキリと認め、作家としての契機となる「幽霊」へと繋がっていく幕切れも詩情にみちていて美しい。
俵万智のあとがきも北先生の人柄を偲ばせる好文でした。
大学入学前に読んでおくといいかも知れないですね。