おれん家の本棚

音楽・映画・書籍なんかのテキトーな感想。フツーにネタバレする。

大塚英志・森美夏「木島日記」

今出てるのは文庫サイズだけど、感想は旧版に拠る
森美夏が画集出したら買うのになー

漫画版

あらすじ
昭和初期の東京。民俗学者にして歌人折口信夫は古書店「八坂堂」に迷い込む。奇怪な仮面で顔を覆った店主・木島平八郎は信じられないような自らの素性を語り始めた…。

1巻
何といっても森美夏の絵が素晴らしい
普通の漫画の文法とは全く違う描き方をしている
こうした才能を見つけ出す大塚の手腕はやっぱり凄いと思う
今回は昭和初期を舞台に大戦に繋がる怪事件が進行していく
人魚、人間計算機、偽天皇ダイダラボッチ伝説
意図的に小説版とは展開をズラすことで偽史としての性格が強調されている
巻末に載せられた膨大な量の参考文献がこの摩訶不思議な物語に一定のリアリティーを持たらしているんだろう 

2巻
津山三十人殺し」の解釈が北神伝綺と違う

3巻
森さんの絵がより洗練された印象を受けた
関東軍の思惑も入ってきてより混迷が深まっていく
ナチスの唱えた優生保護の概念は日本においても無関係ではない事実を突き付けてくる

4巻
今のところ最終巻
ハウスホッファーが登場しナチスが絡んでくる
UFO、アーネンエルベ、ムー大陸
扱われる題材は胡散臭いが、実際に受け入れられた時代があった事が現実の不確かさを浮き彫りにする
出版社の事情さえ無ければ続いたかと思うと非常に惜しい
八雲百怪で回収して欲しいものだ

小説版
 

木島日記
大塚の昭和に対する拘りは結構一貫していて、他の著作群に比べて真面目にまとめてある
偽史を通して大戦前の昭和を描く手法はとても魅力的です
京極某のシリーズに似ているが、こちらはオカルティズムに大幅に針を振っている
折口信夫狂言回しに民俗学をネタにするあたりに著者の学術的な立ち位置が表れてるんじゃなかろうか
創作者としてのこの人は、もっと評価を受けていいと思う

木島日記 乞丐相
津山三十人殺しに範を取った話とか三編、前作と変わらず実在の事件とオカルトを融合させている
荒唐無稽だけど妙に現実感もあって、そこら辺のバランス感覚が巧い
時代が動き出す前の空気が立ち込めている