おれん家の本棚

音楽・映画・書籍なんかのテキトーな感想。フツーにネタバレする。

平山夢明「ダイナー」


あらすじ
ひょんなことから、プロの殺し屋が集う会員制ダイナーでウェイトレスをする羽目になったオオバカナコ。そこを訪れる客は、みな心に深いトラウマを抱えていた。一筋縄ではいかない凶悪な客ばかりを相手に、カナコは生き延びることができるのか?暗躍する組織の抗争、命がけの恋―。

全般的にマンガぽくてキャラクター小説寄りでした。
プロの殺し屋にしてはどいつも抜けていてリアリティが無い。稚拙さが気になって入り込むことが出来なかったです。
取ってつけたようなハッピーエンドも違和感ありました。
ただ食事描写は良かったので美味しいハンバーガーを食べたくなりました。

シャーリイ・ジャクスン「処刑人」



全ての女はメンヘラである/あった。
モラトリアムに多額を費やし、与えられた家庭に不満を垂れ、意味もなく周囲と諍いを起こす。
そんな未熟な自意識は少女を破滅の淵へと導いていく。

頭が良いジャクスンは女の業を自覚し受け入れていたんだろう。
一読しただけでは気づかない徴を随所に配置し物語らしき何かを構成する、
読書というには異質な体験をもたらす手腕は秘蹟という他ない。
最後の魔女による堂々たる魔術。

安部公房「水中都市・デンドロカカリヤ」

あんま人間性を阻害されるとデンドロカカリヤになっちゃうよ!



安部公房作品に漂う閉塞感、モノクロな情景を見ると昭和の作家だなと思う。
ストーリーテリングは無国籍風なんだけどね。
現実の不確かさ、個人の脆弱さには戦後の影が落ちているのかもしれない。

「ぼくらみんなして手をつながなければ、火は守れないんだよ」

又吉直樹「火花」

持続するか分からないけど、少なくとも火花を書いた時の又吉直樹は天才だった。



芸人が書いたという話題性抜きに素晴らしい本でした。
努力が報われない、正しいことが通らない、かもしれない。それは青年期を通して誰もが学ぶことだと思う。
あれほどあったはずの時間が流れ去ろうとしていることに気付いた時の焦燥感。
それでも覆そうと、抗おうと、成そうと、刹那に生きる姿がどれほど美しく愛おしいことか。
火花に共感し感動できるなら、僕らにもきっとまだ炎が残っている。

レイ・ブラッドベリ「刺青の男」

刺青が語り出すって設定はコンセプト勝ちですな。


あらすじ
暑い昼下がりにもかかわらず、その男はシャツのボタンを胸元から手首まできっちりとかけていた。彼は、全身に彫った18の刺青を隠していたのだ。夜になり、月光を浴びると刺青の絵は動きだして、18の物語を紡ぎはじめた…。流星群のごとく宇宙空間に投げ出された男たちを描く「万華鏡」、ロケットにとりつかれた父親を息子の目から綴る「ロケット・マン」など、刺青が映しだす18篇を収録した、幻想と詩情に満ちた短篇集。

ブラッドベリって短編の作家だと思うんですよね。火星年代記にしても実質は連作な訳だし。
冗長にならない簡潔さで鮮やかに一編を切り出す手腕が秀逸。
紛らわしいんだけど本作には「ロケットマン」と「ロケット」が収録されていて、最後に配された「ロケット」が出色の出来でした。
夢があって心があって愛がある。読んでね!

西加奈子「漁港の肉子ちゃん」


あらすじ
男にだまされた母・肉子ちゃんと一緒に、流れ着いた北の町。肉子ちゃんは漁港の焼肉屋で働いている。太っていて不細工で、明るい―キクりんは、そんなお母さんが最近少し恥ずかしい。ちゃんとした大人なんて一人もいない。それでもみんな生きている。港町に生きる肉子ちゃん母娘と人々の息づかいを活き活きと描き、そっと勇気をくれる傑作。

肉々しい物語でした。肉子だけに。
割と悲惨な現実を悲観することもせず、力強く生き抜く肉子ちゃんには人間賛歌を感じる。
解説も含めて、僕たちの生きる現実を肯定してくれる、読者1人1人が肉子ちゃんになれる、そんな優しさに溢れた小説でした。

「肉子ちゃん。」
「大好き。」
「ばああああああああああああああああああああっ!」
あんまり醜いものだから、私は思わず、肉子ちゃんから、目を逸らした。

杉浦日向子「百物語」

特に怖くはない


あらすじ
江戸の時代に生きた魑魅魍魎たちと人間の、滑稽でいとおしい姿。懐かしき恐怖を怪異譚集の形をかりて漫画で描いたあやかしの物語。

杉浦日向子はストーリーというより空気を描く。
この作品世界が息づいている感覚は、近年だと森美夏にも通じている気がする。
上手いとは言えないまでも線の一本一本にこもる説得力。
けしてコマーシャルではないこの作品が、今もって広く支持されることが、百物語が生き続けるということ。