おれん家の本棚

音楽・映画・書籍なんかのテキトーな感想。フツーにネタバレする。

瀬名秀明「小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団」

ドラえもんという作品は読む時期によってかなり印象が変わるもので
①今まさにのび太として
②かつてのび太だった自分として
のび太の保護者として
という自分の年齢に合わせた受け取り方が出来る強度を持っている。
今回、瀬名秀明は②③に焦点を当ててきた。


あらすじ
のび太が北極で拾った物は、なんと巨大ロボットの部品だった。鏡面世界でロボットを組み立てたのび太ドラえもん。しかし、それはビルを一撃で破壊する武器を持つ恐ろしいロボットだった。のび太たちは、そのロボットの存在を秘密にしようとするが…。

ドラえもん初の小説ということで著者も苦労したと思うが、本作は小説でしか表現できない内容・表現に力を入れることで成功をおさめている。
本作の最大の特徴に内面描写のリアリティが挙げられる。
転んで足を切れば痛いし、悪の軍団が迫ってくれば怖い、それは一般的な小学生にとって当たり前のことだ。
そこにはキャラクター化された「のび太」では持ち得ない肉体感覚が存在する。
そうやって客観化された自分を把握できるというのは、ハードカバーで本を読む年齢に達した読者層だからこそだと思う。
また、のび太の冒険を心配する両親という描写を入れることで「子どもたちによる一夏の冒険」を超えた意味を持たせたのも重要なポイントだろう。
のび太たちは世界を守ったのだし、誇っていい。
落としどころとしての星野スミレは若干不要な気がした。