おれん家の本棚

音楽・映画・書籍なんかのテキトーな感想。フツーにネタバレする。

つげ義春「貧困旅行記」


あらすじ
日々鬱陶しく息苦しく、そんな日常や現世から、人知れずそっと蒸発してみたい―やむにやまれぬ漂泊の思いを胸に、鄙びた温泉宿をめぐり、人影途絶えた街道で、夕闇よぎる風音を聞く。窓辺の洗濯物や場末のストリップ小屋に郷愁を感じ、俯きかげんの女や寂しげな男の背に共感を覚える…。主に昭和40年代から50年代を、眺め、佇み、感じながら旅した、つげ式紀行エッセイ決定版。

つげの旅漫画を読んだことがあるなら想像つくように、そのまんまアノ世界が広がっている
冒頭に置かれた「蒸発旅日記」の適当さを見ると彼は至極マジメに適当なんだなあと感慨深いです
ファンレターをくれただけの女性に「きっと結婚してくれるだろう」と会いに行く浅薄さ、席が隣り合っただけの女性に「この人でもいいな」 と流れる軽薄さ
言ってみれば「人生に対する軽さ」 が彼の著作には通底していて、自ら進んで探求してすらいる
本書のタイトルにある「貧困」とはその「軽さ」を見出そうという決意であり、何者でもない自分を見出す旅路なのである