おれん家の本棚

音楽・映画・書籍なんかのテキトーな感想。フツーにネタバレする。

伊藤計劃「虐殺器官」

伊藤計劃(1974年 - 2009年3月20日)


あらすじ
9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。

各所で大絶賛を浴びているので読んでみた
本作で書かれる「現在の延長線上の未来」は紋切り型ではあるが一定のリアリティーを持っており、一般読書家に高く評価されるだろう
逆に、出てくるギミックが2番煎じなのでSF読みには不満が残る
さらに大きな問題として、世界観の理由付けとして提示される「虐殺器官」の描写が不足していることが挙げられる
抽象的になるのは仕方ないにしても、説得力が今一つなのが残念だった
荒削りにならざるを得ない事情があるので致し方ないが
肉体感覚には鬼気迫る物があるので読む価値はあった
未完の大器