おれん家の本棚

音楽・映画・書籍なんかのテキトーな感想。フツーにネタバレする。

Joy Division

死んでしまった人を評価するのは難しい
ましてや「Unknown Pleasures」のTシャツが巷に溢れファッションとして消費されるようになってしまった現状では尚更だ
それでも、自分が故人の享年に近づくにつれその残した業績の大きさに驚かされるようになる
自身の人生で同じだけの業績が残せるだろうかと自問するように
それ程までにJoy Divisionの作品は圧倒的だった
自殺という選択は相容れないが、イアン・カーティスを思うと身近な共感を覚えることが出来るから
彼が抱えていた悩みはそのどれもが誰にでも降りかかり得る物だから
世紀を跨いだ今でさえ彼らの名前が持ち出され後継者とされるバンドが現れるのは、僕達がいつまでもその影を追い続けているからに他ならない

Love will tear us apart


ATMOSPHERE


マンチェスターの伝説
本来時代を率いていくはずだった存在
編集盤でありアルバム未収録の曲がまとめてある
代表曲「Love will tear us apart」をはじめどれも心を揺さぶってくる
後にコートニー・ラヴは「素晴らしい曲というのは聴く人の人生に触れてくるもの。」と述べバンドを引き合いに出している
体を蝕んでいく病、崩壊する家庭、周囲からのプレッシャー
これが「どん底」
イアン・カーティス、享年23歳
その墓標には上述の曲名、すなわち「愛が僕らを引き裂く」と刻まれている
 

1st
超新星爆発後に残った中性子星パルサーの波形を白黒反転させたジャケットがあまりにも有名
電子ビート調の単調なリズムにバリトンボイス、クラウトロック風味のアレンジと相当シーンから乖離した音楽性を確立させている
1曲目「Disorder」から全部名曲と言ってしまっていいだろう
もっとも純然たるパンクであるライブ盤と合わせて聴くと、ここまで仕上げたマーティン・ハネットの功績が大きいと思わされる
「She's Lost Control」は「Substance」の方がいい

彼女は「また抑えがきかなくなった」と言った
そして悲鳴を上げ 地団駄を踏んで言った
「私はまた自制心を失くしてしまった」と


「死に近く」
イアン・カーティスが残した最後のアルバム
音楽的に成熟し、クラウトロックからの影響が大きく見えるようになった
この時代ではかなり先鋭的だったと言える
「Isolation」あたりは後のNOに繋がっていく音だよなあと感慨深い
パンク要素が残る前半からシンセの比重が増える後半と段々暗くなっていくのでアルバムとしての統一感がある
「Twenty Four Hours」聴いてる時の俺は嫌な目をしてると思うよ
最後に待ち受ける「Decades」の息苦しさは異常
ファクトリーが産み出した最良のレコード

「存在?それがなんだというんだ。僕は精一杯存在している。」


アントン・コービンが描くイアン・カーティスの生涯
この監督は「Atomosphere」のPVも作ったりと実際に接点があった人である
モノクロ写真の撮りかたに定評があるが映画にもよく合っていた
JDの楽曲の数々を彼の内面とオーバーラップさせる手法はファンにはたまらない物がある
美化するでもなく、一人の青年のありのままの姿を浮彫りにしたのも好感を持てる
彼が特別なのは、誰でも持っている悲しみや苦しみを共感できる楽曲に昇華できた点だ
人生をコントロールするのは難しいということ、それは本当に胸が痛くなる