おれん家の本棚

音楽・映画・書籍なんかのテキトーな感想。フツーにネタバレする。

シャーリイ・ジャクスン「ずっとお城で暮らしてる」

シャーリイ・ジャクスンは魔女と呼ばれたモダン・ホラーの旗手
女性独特の嫌な心理描写が特徴的です
「ずっとお城で暮らしてる」は45歳という若さで早逝した彼女が遺した最後の長編


あらすじ
あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。ほかの家族が殺されたこの屋敷で、姉のコニーと暮らしている…。悪意に満ちた外界に背を向け、空想が彩る閉じた世界で過ごす幸せな日々。しかし従兄チャールズの来訪が、美しく病んだ世界に大きな変化をもたらそうとしていた。

実に嫌な話だった(褒め言葉
ある年頃の少女にとって外界は敵意に満ちている
魔法とは超常的な力ではなく、そうした外界から世界を守る為のおまじないなのである
だからメリキャットは本物の魔女だ
読んでて気になった点が幾つかあって

・「姪のメアリー・キャサリンは、ずいぶん前に亡くなったぞ」発言の真意
・豹変する姉の態度
・村人が食料を持ってくる意味(供物か謝罪か)


こんな風に多面的な解釈が出来る点で本作は上手いと思った
この世界観の不安定さが異様な緊張感を産み出しているのでしょう
そして、それを捩れた形で安定させる結末の後味の悪さが、本書を忘れられない一冊として読者の胸に刻みつけるのだ
きっと今も少女達はずっとお城で暮らしてる

お茶でもいかがとコニーの誘い、毒入りなのねとメリキャット…