おれん家の本棚

音楽・映画・書籍なんかのテキトーな感想。フツーにネタバレする。

山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」


あらすじ
そばにいても離れていても、私の心はいつも君を呼んでいる―。都会からUターンした30歳、結婚相談所に駆け込む親友同士、売れ残りの男子としぶしぶ寝る23歳、処女喪失に奔走する女子高生…ありふれた地方都市で、どこまでも続く日常を生きる8人の女の子。居場所を求める繊細な心模様を、クールな筆致で鮮やかに描いた心潤う連作小説。

どの物語も起伏がある訳ではなく、地方に生きる若者の退屈を描くこと自体が目的に感じました。
全般に言葉にしがたいアトモスフィアがある。意図的なものだろうし作者の上手さが光ります。
この感覚は巻末の解説がしっかりと言語化してるんで必読。
で、問題が椎名ですよ。
本作は桐島部活〜と同じ方法論で作中世界の神を描いている。女の子たちが「迎えに来て」と願うのは特別な存在である椎名であり、いわゆる地元のイケてる奴な訳です。
しかし読み込むうち絵に描いたような地方の雄・椎名の生活も危うい均衡で成り立ってきたことに気づく。
それは今の地方社会が抱える危うさそのものであるように思えます。
あと10年もしたら、本当に"ありふれた"地方都市は存在するんだろうか。そんなザワつきが胸に残りました。

お前がいなかったら、俺いまもゲーセンで死んでたわ