ミヒャエル・エンデ「鏡のなかの鏡―迷宮―」
「バベルの図書館」を始め言葉によって形而上学的な概念を描き出す試みは昔からあって、本作はそうした流れに位置する実験小説と思われる。
タイトルの通り夢を舞台にした意識の可視化が主題となっていて、物語として面白いかというと好き好きではあるが、こうした実験精神に面白みを感じる人はどうぞ。
確かに迷宮感は凄かった。頭良い人にしか書けなかろう。
「だれも推し量ることはできないんです。希望を失ってしまったら、悪がどこまではびこるものやら…」
津村記久子「エヴリシング・フロウズ 」
成長の物語
津村記久子という書き手に対する信頼が僕にはあって、
それは作者が立脚する価値観、世界観が正しく在るべきものと感じるからだ。
解説でも触れられているように、彼女はラベルを貼って物事を分かった風に誤魔化さない。それと同時にキャラクターの心情を誤魔化すこともしない。
主人公たちは正しく世界を認識したうえで、正しい行動を、在るべき心の持ち方で選択する。
だから彼女が書く物語は強い力を持ち、読み手を勇気付けるのだろう。
地味にヘタウマな挿絵も良い。
まだ小さい彼が、親にも口止めされるような不当な暴力に晒されているとして、自分は何かやるだろうか。
いやいやながら。たぶん、いやいやながら。しないといけないことだから。そこから逃げたら、たぶんまともな大人になれないから。一生後悔するから。
野崎まど「バビロン3 ―終―」
無知の悲しさゆえ、タイトルが大淫婦バビロンから採られていると初めて知った3巻。
新域を悪徳都市バビロンになぞらえる趣旨もありそう。
今回は聖書からの引用が多用されたことで物語の方向性というか作者の意図が見えてきた。
元々曲世の能力には宗教的な感じがあったのだけど、善・悪の相克を論じるにあたって聖書をベースにしたのが本作なんでしょう。
次巻ではアポカリプスまで行きそう。
カズオ イシグロ「夜想曲集」
全体的にインパクトが弱かった。
「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」と副題にあるように、人生の倦怠と黄昏を迎えつつある男女のうだつの上がらないドラマが繰り広げられる。
一冊通じて音楽にある種の慰めを見出す底層があるけど今ひとつ必然性が足りてない。
どことなくララランドを思わせる「降っても晴れても」がロマンチックかな。あのおっさんおばさんバージョン。
ジュノ・ディアス「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」
最後のオチが釈然としなかったんだけど↓のAmazonレビューを読んで意味が分かった。
シャッハさん。。。
https://www.amazon.co.jp/review/R35ZP6R83YHJDX/ref=cm_cr_srp_d_rdp_perm?ie=UTF8&ASIN=4105900897