おれん家の本棚

音楽・映画・書籍なんかのテキトーな感想。フツーにネタバレする。

杉浦日向子「百物語」

特に怖くはない


あらすじ
江戸の時代に生きた魑魅魍魎たちと人間の、滑稽でいとおしい姿。懐かしき恐怖を怪異譚集の形をかりて漫画で描いたあやかしの物語。

杉浦日向子はストーリーというより空気を描く。
この作品世界が息づいている感覚は、近年だと森美夏にも通じている気がする。
上手いとは言えないまでも線の一本一本にこもる説得力。
けしてコマーシャルではないこの作品が、今もって広く支持されることが、百物語が生き続けるということ。

高野秀行「未来国家ブータン」

あらすじ
「雪男がいるんですよ」。現地研究者の言葉で迷わず著者はブータンへ飛んだ。政府公認のもと、生物資源探査と称して未確認生命体の取材をするうちに見えてきたのは、伝統的な知恵や信仰と最先端の環境・人権優先主義がミックスされた未来国家だった。世界でいちばん幸福と言われる国の秘密とは何か。そして目撃情報が多数寄せられる雪男の正体とはいったい―!?驚きと発見に満ちた辺境記。

ブータンという国はイメージが先行してるところがあるので実際現地に飛んだ著者の感想は中々タメになりました。
本書を読み終わる頃にはアジア的な素朴さとしたたかな国家戦略を備えた全貌が明らかになります。
正直、言うほど幸せな国ではない。
悲喜こもごもな顛末は起承転結がハッキリしている訳ではないけれど、旅行記の醍醐味を味わえる一冊でした。


教育水準が上がり経済的に余裕が出てくると、人生の選択肢が増え葛藤がはじまる。自分の決断に迷い、悩み、悔いる。不幸はそこに生まれる。

下園壮太「自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れを取る技術」



精神的マッチョになろうと思って読んで見ました。
要約すると「精神活動もエネルギーを消費するから休んだり計画建ててコントロールしよう」ということになります。
メンタルの問題は自分でも把握しづらいため、こうした本を読んで客観視することが大切だと思いました。

カラマーゾフの兄弟を読み終わって

重厚長大という前評判に気後れしたものの、読んでみるとめっちゃエモかったです。
ドストエフスキーはちゃんとエンタメしてるのが良い。
2部構想で未完なのでストーリーの寓意が判然としきらないんですけど、以下私見。

・ストーリーラインは①ミーチャの受難②イリューシャの死の2本。特に②の方はサイドストーリーではなく柱の1つではないか。
・聖書、特にキリストの死がベースになっている。全編を通してキリスト教価値観での罪と愛が殊更に強調される。
・超自然的な現象、宗教的な奇跡は明確に否定される。心の在り方として信仰を定義。
・キリストと重なるようにしてミーチャとイリューシャは受難する。何を贖うのか、そもそも何かを贖わなければいけないのか再三に渡り議論される。2人は共に父親のために十字架を背負う。
・主人公アリョーシャが2人の犠牲に意味を見出したところで物語は幕を閉じる。結末に着目すると愛のための行動にこそ人間性=善性が現出すると読み取れる。罪のための犠牲ではなく、愛のための犠牲。他への思いやり、協調、そうした全て。

多分、作者は無償の愛を書きたかったんだよ。

DEATH NOTE Light up the NEW world



割と原作の世界観が好きなので読んでみました。あの後、世界はどうなったのかしらと気になっていたからです。
うんこでした。以下うんこ解説。

・月とLは精子バンクのドナーだったのか遺伝子をばら撒いています。ここ、重要な設定なのに説明がないのでよく分からないです。
・終盤になると米軍介入と核使用が仄めかされます。ちょっとシンゴジラと被りますね。比較すると駄目さが引き立つ。
・すると唐突に特殊部隊とキラの銃撃戦が始まります。ここまでくるとバトルロワイアルです。2の方ね。
・最後は更なる続編への色気を醸しつつフェードアウト。

まあプロットがうんこなのは良いんですけど、今回のプロジェクトを主導したのが誰なのか不明なのが気持ち悪かったです。この本の作者すら分からない。
責任者不在のままそれっぽいのを詰め込んで適当にでっち上げたというよくある日本映画の駄目パターン。
この本がデスノートという良コンテンツを殺すデスノートだったというオチでしたとさ。
おしまい。