おれん家の本棚

音楽・映画・書籍なんかのテキトーな感想。フツーにネタバレする。

カラマーゾフの兄弟を読み終わって

重厚長大という前評判に気後れしたものの、読んでみるとめっちゃエモかったです。
ドストエフスキーはちゃんとエンタメしてるのが良い。
2部構想で未完なのでストーリーの寓意が判然としきらないんですけど、以下私見。

・ストーリーラインは①ミーチャの受難②イリューシャの死の2本。特に②の方はサイドストーリーではなく柱の1つではないか。
・聖書、特にキリストの死がベースになっている。全編を通してキリスト教価値観での罪と愛が殊更に強調される。
・超自然的な現象、宗教的な奇跡は明確に否定される。心の在り方として信仰を定義。
・キリストと重なるようにしてミーチャとイリューシャは受難する。何を贖うのか、そもそも何かを贖わなければいけないのか再三に渡り議論される。2人は共に父親のために十字架を背負う。
・主人公アリョーシャが2人の犠牲に意味を見出したところで物語は幕を閉じる。結末に着目すると愛のための行動にこそ人間性=善性が現出すると読み取れる。罪のための犠牲ではなく、愛のための犠牲。他への思いやり、協調、そうした全て。

多分、作者は無償の愛を書きたかったんだよ。

DEATH NOTE Light up the NEW world



割と原作の世界観が好きなので読んでみました。あの後、世界はどうなったのかしらと気になっていたからです。
うんこでした。以下うんこ解説。

・月とLは精子バンクのドナーだったのか遺伝子をばら撒いています。ここ、重要な設定なのに説明がないのでよく分からないです。
・終盤になると米軍介入と核使用が仄めかされます。ちょっとシンゴジラと被りますね。比較すると駄目さが引き立つ。
・すると唐突に特殊部隊とキラの銃撃戦が始まります。ここまでくるとバトルロワイアルです。2の方ね。
・最後は更なる続編への色気を醸しつつフェードアウト。

まあプロットがうんこなのは良いんですけど、今回のプロジェクトを主導したのが誰なのか不明なのが気持ち悪かったです。この本の作者すら分からない。
責任者不在のままそれっぽいのを詰め込んで適当にでっち上げたというよくある日本映画の駄目パターン。
この本がデスノートという良コンテンツを殺すデスノートだったというオチでしたとさ。
おしまい。

ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟〈上〉」



上巻読み終えるのに1ヶ月かかりました。
金原ひとみは4ヶ月かかったそうなので健闘と言える、かもしれない。しらない。
登場人物紹介に終始する巻なので世間で絶賛される所以はまだ分かりません。きっとここで張られた伏線が活きるのでしょう。
中下に期待。

酉島伝法『皆勤の徒』

通勤中に読むには色んな意味でしんどかった…



家畜人ヤプーとかあんな感じ。解説読むまで何が起きてるか分からんかったわ。
異形SFの怪作!

”外回りはそれぞれが頭取という肩書きを持っており、従業者たちの首を鋭利な歯舌で切断して、結球させた通信葉に生首を封じるヘッドハンティングに長けている”

山本周五郎「青べか物語」

箱庭世界観


あらすじ
うらぶれた漁師町浦粕に住みついた“私"の眼を通して、独特の狡猾さ、愉快さ、質朴さをもつ住人たちの生活ぶりを巧みな筆で捉える。

一つの世界の構築度では指輪物語に比肩するのでは。あるいはゼルダかもしれない。
他人の妻を寝取って悪びれることもない、寸借詐欺を働き開き直る、そんな欲にまみれ薄汚れた民衆たちの生き様が肯定的に活き活きと描写されている。
汚物と隣り合わせの純愛が垣間見える瞬間にはあまりの美しさに息を飲みます。
清濁合わせて肯定するのが真のヒューマニズムなんでしょうな。今の文学界でここまで巨視的に現実を認識できる作家がいるかどうか。
文学が世界を作り出す力を持つことを示す、身震いするほどの傑作。